溶接・板金加工業は、BtoB製造業のなかでもAI検索の影響を受けやすい業種です。 「ステンレス TIG溶接 小ロット」「アルミ板金 t3.0 試作」といったクエリに対して、AI検索エンジンは対応可能な加工会社の情報を統合して回答を生成します。
この回答に自社が含まれるかどうかは、対応板厚・溶接方法・資格情報がどれだけ構造化されているかに大きく依存します。 溶接・板金加工は仕様の数値情報が多く、構造化データの効果が出やすい領域です。
この記事では、加工仕様の構造化からコンテンツ設計、ローカルGEOまで、溶接・板金加工業に特化したGEO対策を解説します。
溶接・板金加工業がAI検索で問われる3つの情報
発注担当者がAI検索で溶接・板金加工会社を探す際、問われる情報は大きく3つに分かれます。
加工仕様。 対応素材(鉄・ステンレス・アルミ・チタン等)、対応板厚の範囲、溶接方法(TIG・MIG・MAG・スポット等)、加工精度。 これらの情報が数値で整理されていることが前提条件です。
資格・認証。 JIS溶接技能者の資格区分、AWS認証、ISO 9001やISO 3834の取得状況。 AIは信頼性の裏付けとして資格情報を重視します。
対応力。 試作1個から量産まで対応可能か、短納期対応の可否、設計段階からのVA/VE提案の有無。 発注担当者の具体的な課題に応じた情報が求められます。
加工仕様をService schemaで構造化する
対応可能な加工仕様をAIに正確に伝えるため、Service schemaを活用します。
{
"@context": "https://schema.org",
"@type": "Service",
"name": "TIG溶接加工",
"provider": {
"@type": "LocalBusiness",
"name": "○○製作所",
"address": {
"@type": "PostalAddress",
"addressLocality": "大阪府東大阪市",
"postalCode": "577-0000"
}
},
"serviceType": "TIG溶接",
"hasOfferCatalog": {
"@type": "OfferCatalog",
"name": "対応素材・板厚",
"itemListElement": [
{
"@type": "Offer",
"itemOffered": {
"@type": "Service",
"name": "ステンレスTIG溶接",
"additionalProperty": [
{
"@type": "PropertyValue",
"name": "対応板厚",
"minValue": 0.5,
"maxValue": 12.0,
"unitText": "mm"
},
{
"@type": "PropertyValue",
"name": "最小ロット",
"value": 1,
"unitText": "個"
}
]
}
}
]
}
}
素材ごとに対応板厚の最小値・最大値を明記することで、AIが「ステンレス t5.0のTIG溶接に対応できる会社」といったクエリに回答しやすくなります。 溶接方法ごとにService schemaを分けて実装してください。
溶接資格・認証情報の構造化
資格情報はAI検索における信頼性の裏付けです。 hasCredential プロパティで資格情報を構造化します。
{
"@context": "https://schema.org",
"@type": "LocalBusiness",
"name": "○○製作所",
"hasCredential": [
{
"@type": "EducationalOccupationalCredential",
"credentialCategory": "溶接資格",
"name": "JIS溶接技能者 TN-F(ステンレス鋼TIG溶接 薄板)",
"recognizedBy": {
"@type": "Organization",
"name": "一般社団法人日本溶接協会"
}
},
{
"@type": "EducationalOccupationalCredential",
"credentialCategory": "品質認証",
"name": "ISO 9001:2015",
"validFrom": "2020-04-01"
}
]
}
資格は具体的な区分(TN-F、SA-3Fなど)まで記載してください。 「溶接資格保有」のような曖昧な表記では、AIが具体的なクエリに対して引用しにくくなります。
加工実績コンテンツの設計
AI検索で引用されるためには、構造化データだけでなく加工実績をテキストコンテンツとして公開することが重要です。 以下の項目を統一フォーマットで掲載してください。
製品名・用途。 「半導体製造装置向けステンレスチャンバー」のように、業界と用途を具体的に記載します。
素材と板厚。 「SUS304 t2.0」のように素材記号と板厚を明記します。
加工方法と精度。 「TIG溶接、溶接ビード幅±0.5mm」のように加工方法と精度を数値で示します。
ロットと納期。 「試作5個、納期10営業日」のように具体的な条件を記載します。
実績ページのURLは製品カテゴリごとに固定し、新しい実績を追加する形式にしてください。 AIが参照するURLの評価が蓄積されます。
設備一覧ページの最適化
保有設備はAI検索で頻繁に参照される情報です。 設備名、メーカー、型式、加工能力(最大板厚、最大加工サイズ)を表形式で整理してください。
HTMLテーブルで記述し、設備カテゴリごとにセクションを分けます。
| 設備名 | メーカー・型式 | 加工能力 |
|---|---|---|
| TIG溶接機 | ダイヘン DA-300P | 板厚0.5〜12.0mm |
| レーザー加工機 | アマダ ENSIS-3015AJ | 板厚0.5〜25.0mm、加工範囲3000×1500mm |
| ベンディングマシン | アマダ HG-1303 | 曲げ長さ3100mm、加圧能力130t |
設備情報はテーブル形式がAIに解釈されやすく、比較クエリへの対応力が高まります。
robots.txtとクローラー制御
AI検索エンジンのクローラーが加工仕様ページや実績ページにアクセスできることを確認してください。
User-agent: GPTBot
Allow: /services/
Allow: /works/
Allow: /equipment/
User-agent: Google-Extended
Allow: /services/
Allow: /works/
Allow: /equipment/
User-agent: *
Allow: /
見積もりフォームの送信完了ページや管理画面はDisallowで除外しつつ、加工仕様・実績・設備情報のディレクトリは明示的にAllowとします。
ローカルGEO——工場所在地の最適化
「東大阪 板金加工」「大田区 溶接加工」のようなローカルクエリに対応するため、LocalBusiness schemaで工場の所在地情報を構造化します。
Googleビジネスプロフィール(GBP)の情報と自社サイトの情報は完全に一致させてください。 工場名、住所、電話番号、営業時間に加え、対応可能な加工方法をサービス情報として登録します。
複数工場を持つ場合は工場ごとにページを分け、それぞれにLocalBusiness schemaを実装します。 工場ごとの対応設備や得意分野が異なる場合、その違いを明確に記載してください。
実装ロードマップ
フェーズ1:基盤整備(2〜3週間)。 Service schemaの実装(対応素材・板厚・溶接方法の構造化)、hasCredentialによる資格情報の構造化、LocalBusiness schemaの実装。
フェーズ2:コンテンツ整備(1〜2か月)。 加工実績ページの統一フォーマット化、設備一覧の表形式での整理、robots.txtの最適化。
フェーズ3:継続運用(月次)。 新規加工実績の追加、設備導入・更新時の反映、資格更新の反映。
まとめ
溶接・板金加工業のGEO対策は、加工仕様の数値情報の構造化、資格・認証情報の可視化、加工実績コンテンツの充実を軸に進めます。
対応板厚や溶接方法は数値データとして構造化しやすく、AIが具体的な仕様クエリに回答する際の情報源になります。 Service schema、hasCredential、LocalBusiness schemaを組み合わせ、段階的に実装を進めてください。
参考文献
- Aggarwal et al. (2023). GEO: Generative Engine Optimization. arXiv:2311.09735
- Schema.org. Service, Offer, QuantitativeValue Type Definitions. https://schema.org/Service
- Gao et al. (2024). Retrieval-Augmented Generation for Large Language Models: A Survey. arXiv:2312.10997
- 一般社団法人日本溶接協会. 溶接技能者資格の種類と認証制度. https://www.jwes.or.jp/