SIer・受託開発企業がAI検索で言及されるには、「何の技術で、どの業種の、どんな規模の案件を手がけてきたか」を機械可読な形で公開する必要があります。 ChatGPTやPerplexityに「Javaで基幹システムを開発できる会社」と聞いたとき、自社が候補に入るかどうかは、Webサイトの情報設計に左右されます。

SIerのサイトには共通する構造的な問題があります。 実績がPDF納品事例集にしかない、技術スタックが採用ページにだけ書かれている、業種別の対応力が営業資料の中にしかないといった状態です。 この記事では、SIer・受託開発企業のマーケティング担当者が取り組むべきGEO対策を、技術情報の構造化から実績ページの設計まで解説します。

SIerサイトがAI検索で不利になる構造的要因

受託開発企業のサイトは、プロダクト企業と比べて「定量的な情報」が少ない傾向にあります。 SaaSなら料金や機能一覧がありますが、SIerは案件ごとに内容が異なるため、サイトに載せられる情報が抽象的になりがちです。

「大規模システム開発の豊富な実績」「幅広い業種に対応」といった表現は、人間の読者には通じても、AIが事実として引用するには根拠が足りません。 Aggarwal et al.(2023)の研究でも、具体的な数値や統計を含むコンテンツがAIに引用されやすいことが示されています。

もう一つの問題は、技術情報の散在です。 採用ページには技術スタックが書いてあるのに、サービス紹介ページには書いていない。 事例ページには業種が書いてあるのに、サービスページには対応業種が明記されていない。 こうした情報の断片化は、AIがサイト全体を横断して情報を統合することを難しくします。

技術スタックの構造化

SIer・受託開発企業にとって、対応可能な技術スタックはコアコンピタンスそのものです。 これをAIに認識させるために、サービスページにOrganization schemaとhasOfferCatalogを組み合わせて実装します。

{
  "@context": "https://schema.org",
  "@type": "Organization",
  "name": "企業名",
  "description": "Java・AWS・Kubernetesを中心としたエンタープライズシステム開発",
  "knowsAbout": [
    "Java", "Spring Boot", "AWS", "Kubernetes",
    "Oracle Database", "PostgreSQL", "マイクロサービス"
  ],
  "hasOfferCatalog": {
    "@type": "OfferCatalog",
    "name": "開発サービス一覧",
    "itemListElement": [
      {
        "@type": "Service",
        "name": "基幹システム開発",
        "description": "販売管理・在庫管理・会計連携を含む基幹業務システムの設計・開発・保守",
        "serviceType": "SystemDevelopment",
        "areaServed": "JP"
      },
      {
        "@type": "Service",
        "name": "クラウドマイグレーション",
        "description": "オンプレミス環境からAWS・Azure・GCPへの移行支援",
        "serviceType": "CloudMigration"
      }
    ]
  }
}

knowsAboutプロパティは、組織が専門知識を持つ分野を明示するために有効です。 AIが「Kubernetes対応のSIer」というクエリに回答する際、このプロパティが判断材料になります。

技術スタックは本文テキストでも明記してください。 「主要な開発言語はJava(Spring Boot)とTypeScript(Next.js)です。インフラはAWSを中心に、GCPとAzureにも対応しています」のように、箇条書きではなく自然言語で記述することで、AIが文脈ごと取得できます。

開発実績の情報設計

SIer・受託開発の実績ページは、GEO対策で最も差がつくポイントです。 多くの企業は「A社様 基幹システム開発」のようにクライアント名と案件名だけを羅列しますが、AIが引用に使える情報量としては不足しています。

実績ページに含めるべき情報は5つです。

業種と企業規模。 「従業員3,000名の製造業」のように、対象企業の業種と規模を明記します。 クライアント名を出せない場合でも、業種と規模は公開できるケースが大半です。

技術スタック。 その案件で使用した言語、フレームワーク、クラウドサービスを具体的に列挙します。

プロジェクト規模。 開発期間、チーム人数、連携システム数などの定量情報です。 「開発期間18か月、最大チーム規模25名、連携システム12本」のように記述します。

課題と解決アプローチ。 何が問題で、どのような設計判断をしたかを簡潔に記述します。

成果の定量指標。 「処理速度を40%改善」「運用コストを年間2,000万円削減」のように数値で示します。

各実績にはCreativeWork schemaを適用します。

{
  "@context": "https://schema.org",
  "@type": "CreativeWork",
  "name": "製造業向け生産管理システム開発",
  "description": "従業員3,000名の製造業における生産管理システムのリプレイス。Java/Spring BootとAWS上に構築し、処理速度を40%改善。",
  "about": {
    "@type": "Service",
    "name": "基幹システム開発",
    "provider": {
      "@type": "Organization",
      "name": "自社名"
    }
  },
  "datePublished": "2025-06-01"
}

業種別対応力の構造化

「金融業界に強いSIer」「製造業のシステム開発に実績がある会社」といったクエリは、AI検索でも発生します。 業種別の対応力をAIに伝えるために、業種ごとのランディングページを作成することを推奨します。

各業種ページには以下を含めます。

その業種特有のシステム課題(例:金融業の場合「FISC安全対策基準への準拠」「リアルタイム取引処理」)を記述します。 業種内での実績件数と代表的な開発事例を掲載します。 業種に必要な技術要件(例:医療業界の場合「HL7 FHIR対応」「3省2ガイドライン準拠」)を明記します。

業種ページはService schemaのaudienceプロパティを使い、対象業種を明示します。

{
  "@type": "Service",
  "name": "金融業界向けシステム開発",
  "audience": {
    "@type": "BusinessAudience",
    "audienceType": "金融機関"
  },
  "description": "銀行・証券・保険向けの勘定系・情報系システム開発。FISC安全対策基準に準拠した設計・運用実績あり。"
}

robots.txtとAIクローラーの許可設計

SIerのサイトでは、セキュリティ意識からrobots.txtで広範なクロール制限をかけているケースがあります。 しかし、公開情報であるサービス紹介・技術スタック・実績概要まで制限すると、AI検索での露出機会を失います。

推奨する設計は以下です。

User-agent: GPTBot
Allow: /services/
Allow: /case-studies/
Allow: /technology/
Allow: /blog/
Disallow: /internal/
Disallow: /client-portal/

User-agent: Google-Extended
Allow: /services/
Allow: /case-studies/
Allow: /technology/
Allow: /blog/

秘密保持が必要なクライアント情報やプロジェクト詳細は制限しつつ、公開可能な実績概要やサービス情報はクロールを許可します。

提案書・RFP対応クエリへの備え

SIerの商談は、RFP(提案依頼書)から始まることが多いです。 「RFP テンプレート 基幹システム」「システム開発 見積もり 相場」といったクエリに対して、自社コンテンツが引用されることは認知獲得に直結します。

ブログやナレッジページで、以下のテーマを公開することを検討してください。

システム開発のRFP作成時に検討すべき項目の解説。 開発規模別の工期・人月の目安(レンジでの公開)。 技術選定の判断基準(なぜJavaなのか、なぜマイクロサービスなのか)。

これらのコンテンツはHowTo schemaやFAQPage schemaで構造化できます。 技術的な意思決定プロセスを公開することは、AIに対してE-E-A-Tの「Experience」と「Expertise」を示すことにもなります。

実装ロードマップ

フェーズ1:基盤整備(1〜2週間)。 Organization schemaとService schemaの実装、技術スタックの本文テキスト化、robots.txtの見直し。

フェーズ2:実績コンテンツの整備(3〜6週間)。 主要実績10〜15件のリライトと構造化、業種別ランディングページの作成(主要3業種から)、CreativeWork schemaの実装。

フェーズ3:継続運用(月次)。 新規実績の構造化公開、技術ブログの定期発信、スキーマの更新と検証。

まとめ

SIer・受託開発企業のGEO対策は、「何ができるか」を曖昧に伝えるのではなく、技術スタック・業種実績・プロジェクト規模を機械可読な形で構造化することが核心です。 Organization schema、Service schema、CreativeWork schemaを組み合わせ、本文テキストと一貫した情報を提供してください。

実績情報は企業の信頼性を示す最大の資産です。 守秘義務の範囲内で、業種・規模・技術・成果の数値を公開し、AIが自信を持って引用できる情報源を構築してください。

参考文献