「要介護3の母が入れる特養、横浜で空きがあるところはありますか」——介護施設を探す家族がAI検索にこうした質問を投げかけるケースが増えています。 ChatGPTやPerplexityは、施設の公式サイト、介護情報ポータル(LIFULL介護、みんなの介護など)、自治体の介護サービス情報公表システムから情報を収集し、回答を生成します。

介護施設の検索は、入居条件の複雑さが特徴です。 介護度、施設種別(特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、グループホームなど)、費用、所在地、空き状況という複数の条件を同時に満たす施設を探す必要があります。 この記事では、介護・福祉施設がAI検索の回答に引用されるための情報構造化の方法を解説します。

医療・ヘルスケアのAI検索データ

指標数値出典
健康関連の質問数4,000万人/日(週間2.3億件)ValueStream AI, 2026
医療分野AI検索CVR27%(従来検索2.1%の13倍)ValueStream AI, 2026
AI検索トラフィック成長率前年比445%—

介護施設のサイトがAI検索で引用されにくい理由

介護施設のWebサイトには、AI検索への対応を妨げる構造的な課題があります。

入居条件の記載が不明確。 対象となる介護度(要介護1〜5、要支援1〜2)、認知症対応の可否、医療的ケア(胃ろう、たん吸引、インスリン注射など)の受け入れ可否が、ページ上に明確に記載されていないケースが多いです。 「要介護3 認知症 対応 施設」というクエリに答えるには、これらの情報がHTMLテキストとして存在する必要があります。

費用構造の複雑さ。 介護施設の費用は、入居一時金、月額費用(家賃・管理費・食費・介護保険自己負担分)など複数の項目で構成されます。 これらを一覧化していないサイトでは、「月額いくら」というクエリに対してAIが引用する情報が不足します。

空き状況の更新頻度。 施設の空き状況は変動しますが、Webサイト上に空き情報が掲載されていない、または更新が滞っている施設が多いです。 AI検索は最新の情報を回答に含めようとするため、更新日の不明な情報は引用対象から外れやすくなります。

LocalBusiness schemaによる施設情報の構造化

介護施設のSchema.orgには専用のタイプが存在しないため、LocalBusinessを基盤として必要な情報を構造化します。

{
  "@context": "https://schema.org",
  "@type": "LocalBusiness",
  "additionalType": "https://schema.org/CivicStructure",
  "name": "○○苑(特別養護老人ホーム)",
  "description": "ユニット型特別養護老人ホーム。全室個室、定員80名。要介護3〜5の方を対象に、24時間介護体制で運営",
  "address": {
    "@type": "PostalAddress",
    "streetAddress": "横浜市港北区○○町1-2-3",
    "addressLocality": "横浜市港北区",
    "addressRegion": "神奈川県",
    "postalCode": "222-0001",
    "addressCountry": "JP"
  },
  "geo": {
    "@type": "GeoCoordinates",
    "latitude": "35.5321",
    "longitude": "139.6326"
  },
  "telephone": "+81-45-123-4567",
  "openingHoursSpecification": {
    "@type": "OpeningHoursSpecification",
    "dayOfWeek": ["Monday", "Tuesday", "Wednesday", "Thursday", "Friday"],
    "opens": "09:00",
    "closes": "17:00",
    "description": "見学・相談受付時間"
  },
  "amenityFeature": [
    {"@type": "LocationFeatureSpecification", "name": "全室個室", "value": true},
    {"@type": "LocationFeatureSpecification", "name": "看護師24時間配置", "value": true},
    {"@type": "LocationFeatureSpecification", "name": "機能訓練室", "value": true},
    {"@type": "LocationFeatureSpecification", "name": "認知症対応", "value": true},
    {"@type": "LocationFeatureSpecification", "name": "看取り対応", "value": true}
  ],
  "numberOfEmployees": {
    "@type": "QuantitativeValue",
    "value": 65,
    "description": "介護職員45名、看護職員8名、その他12名"
  }
}

amenityFeatureには、入居検討者が条件として指定する項目を網羅します。 「認知症対応」「看取り対応」「胃ろう対応」「リハビリ設備あり」など、施設の受け入れ体制に関する情報を構造化することで、条件指定クエリへの対応力が向上します。

費用情報の構造化

介護施設の費用は構造が複雑なため、Offer schemaで体系的に記述します。

{
  "@context": "https://schema.org",
  "@type": "Offer",
  "name": "特別養護老人ホーム ○○苑 月額費用",
  "description": "ユニット型個室の月額費用目安(介護保険1割負担の場合)",
  "priceSpecification": [
    {
      "@type": "UnitPriceSpecification",
      "name": "居住費",
      "price": "60180",
      "priceCurrency": "JPY",
      "unitText": "月額"
    },
    {
      "@type": "UnitPriceSpecification",
      "name": "食費",
      "price": "43350",
      "priceCurrency": "JPY",
      "unitText": "月額"
    },
    {
      "@type": "UnitPriceSpecification",
      "name": "介護サービス費(要介護3・1割負担)",
      "price": "23790",
      "priceCurrency": "JPY",
      "unitText": "月額"
    }
  ]
}

HTML本文にも費用の内訳を表形式で記載します。 「月額合計の目安:約12〜15万円(要介護3、ユニット型個室、1割負担の場合)」のように、代表的なケースでの総額目安を明示すると、AIが費用比較クエリに対して引用しやすくなります。

負担軽減制度(特定入所者介護サービス費、高額介護サービス費)の対象条件と減額後の費用も記載すると、「特養 費用 安くなる方法」のようなクエリにも対応できます。

入居条件と空き状況の情報設計

入居条件の明示

施設の入居条件を、以下の項目ごとに明確に記載します。

対象介護度(例:要介護3〜5)、年齢条件(例:65歳以上、特定疾病の場合は40歳以上)、認知症の受け入れ(対応可 / 軽度のみ / 不可)、医療的ケアの対応範囲(胃ろう・たん吸引・インスリン注射・在宅酸素・透析通院など)。

これらの情報を箇条書きまたは表形式で整理し、施設の入居案内ページに掲載します。 「胃ろう 対応 介護施設 横浜」のようなクエリに対して、AIが条件を照合して回答に含めるための情報基盤になります。

空き状況の発信

空き状況は、月1回以上の頻度で更新し、更新日を明示します。 「2026年8月1日現在:空き2室(ユニット型個室)」のように、日付と空き数を具体的に記載します。

空きがない場合も「現在満室。待機者数 約15名(2026年8月時点)」のように状況を明示することで、情報の鮮度が伝わります。 更新日が古い情報はAI検索での引用優先度が下がるため、更新フローを業務プロセスに組み込む必要があります。

人員配置と運営体制の公開

介護施設の信頼性を伝える上で、人員配置情報は重要です。

「介護職員:入居者2.5人に対して1人(法定基準3:1を上回る配置)」「看護職員:常勤3名・非常勤2名、日中は常時2名以上勤務」のように、配置比率と勤務体制を具体的に記載します。

厚生労働省の介護サービス情報公表制度では、施設の人員配置や運営方針が公開されています。 自施設のサイト上でもこれらの情報を掲載し、情報公表システムのページへのsameAsリンクを設けることで、AIが情報の整合性を検証できるようになります。

英国では、Care Quality Commission(CQC)が全介護施設の品質評価をオンラインで公開しており、施設検索プラットフォームのcaerhome.co.ukは、CQCの評価データと施設の空き状況を構造化して掲載しています。 carehome.co.ukの報告によると、構造化されたCQC評価データと空き状況を掲載した施設ページは、検索経由の問い合わせ数がそうでない施設と比較して約40%多いとされています。 日本においても、介護サービス情報公表制度のデータと自施設の情報を構造化して連携させることで、AIの信頼性評価を高めることができます。

FAQコンテンツの設計

介護施設の検討段階では、家族からの質問が多く寄せられます。 よくある質問をFAQPage schemaで構造化することで、AIがこれらの質問に対して直接引用できる情報になります。

典型的なFAQ項目:「入居までの待機期間はどれくらいですか」「面会時間は何時から何時までですか」「外出・外泊は可能ですか」「看取り対応はしていますか」「認知症が進行した場合も退居しなくてよいですか」。

回答は50〜150文字で簡潔にまとめ、具体的な数値や条件を含めます。

実装ロードマップ——3か月で始めるGEO対策

月1:基盤整備

月2:費用・空き情報の構造化

月3:計測と拡大

まとめ

介護・福祉施設のGEO対策は、入居条件・費用・空き状況・人員配置という4つの情報を構造化し、定期的に更新することが核心です。 AI検索では「要介護3 特養 空き 横浜」のように、介護度・施設種別・エリア・空き状況を組み合わせたクエリが主流になります。

介護ポータルサイトが大量の施設情報を構造化して保有している現状では、公式サイトが引用されるためには、ポータルにはない詳細な情報(人員配置比率、医療的ケアの対応範囲、負担軽減制度の案内など)を提供する必要があります。 まずはLocalBusiness schemaの実装と、入居条件・費用情報の明確化から着手することを推奨します。

参考文献